| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-231  (Poster presentation)

機能的多様性から見た草刈り再導入の効果ー放棄畦畔の再生実験ー

*髙島敬子(神戸大・人間発達環境), 長井拓馬(nouka-nagai), 勝原光希(神戸大・人間発達環境), 上原勇樹(神戸大・人間発達環境), 丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)

近年、世界的に農地の耕作放棄が増加している。農地周辺の半自然草地においても、放棄が高茎草本の優占や木本植物の侵入を促進し、草地性植物の多様性を減少させることが指摘されている。日本では、丘陵地において棚田の放棄が増加しているが、棚田は半自然草地性希少種のホットスポットとなっており、放棄地増加はこれらの希少種の生育地を大きく脅かしている。そのため、かつて希少種が多くみられた放棄棚田において草地管理を再開し、希少種の生育地を再生する必要がある。
 2014年より、兵庫県神戸市と篠山市の放棄棚田畦畔において、草刈りの再導入による植生再生の過程を追跡する野外実験を開始した。本実験では草刈りの時期や頻度が異なる実験区を設け、より効果的な再生方法の検討も行った。本研究では、2017年に開花植物調査を行い、各実験区における再生成功度の評価を試みた。再生成功度の評価指標としては種数・種組成が広く用いられるが、再生目標と同じ種組成を達成するには長期間を要することが多く報告されている。そのため、本研究のように実験開始後4年程度の実験区では、種組成を指標とした場合、再生成功度は過少評価されうる。
今回は、機能的多様性(FD)を指標とした再生評価を行なった。FDは群集の形質構成を分析することで生態系機能の回復の程度を評価でき、その後の種多様性回復の指標にもなると考えられており、近年では群集再生の評価指標として注目されている。半自然草地の再生では、FDは種多様性の回復よりもすばやく回復することが示されており、短期間での再生効果の評価ができる。
本研究では、上記の管理再導入実験を行っている実験区と伝統的な管理がなされている畦畔を調査区とし、調査区内で開花した種を対象種として、それらの繁殖や生長などに関わる複数形質のFDを調査区ごとに算出・比較し、草刈り再導入による植生再生の成功度評価を行った。


日本生態学会