| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-263  (Poster presentation)

冷温帯アカマツ幼齢林と老齢林におけるNEPの経年変化

*小山悠太(早稲田大・院・先進), 鈴木英里(東工大・院・生命理工), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)

 森林生態系の炭素収支は林齢によって異なるとされ、幼齢林(0~10年生)では特に大きく変化すると予想される。林齢差が生態系純生産(NEP)に及ぼす影響を同一気候帯、同一樹種において比較した研究は少なく、幼齢林に着目した研究も少ない。本研究では、冷温帯のアカマツ幼齢林(8年生)と老齢林(94年生)に注目し、樹木の成長量(ΔB)とリターフォール量(LF)、土壌呼吸速度(SR)を測定し、バイオメトリック法によってNEPを算出し、両林齢間における2014年から2017年までの炭素収支の経年比較を行った。また林床に到達する光量の多い幼齢林においては、NEPに対する下層植生の成長量(ΔBu)の寄与が大きいと予想されるため、2016年からΔBuの測定も行った。

 2015年から2017年の幼齢林において、NEPは-3.92、0.45、3.27 tC ha-1 yr-1、ΔBは1.51、3.40、3.71 tC ha-1 yr-1と経年的な増加を示した。またSR量は11.32、10.10、7.30 tC ha-1 yr-1と経年的な減少を示した。一方、老齢林のNEPでは0.00、-0.44、1.22 tC ha-1 yr-1と経年的な大きな変化は示さず、また、ΔB、LF、SR量においても明瞭な変化は見られなかった。これらの結果より、幼齢林におけるNEPの経年的な増加はΔBの顕著な増加とSR量の減少が起因していると考えられる。ΔBの増加は著しい幼木の成長に由来すると示唆された。また、SR量の減少は幼齢林の平均地温が低下していたことに由来することが明らかになった。平均地温の低下は、幼木の著しい経年成長により、林床へ差し込む光量が減少したためであると考えられる。また幼齢林におけるΔBuは2016、2017年においてNPPの18%に相当し、吸収量の中で大きな役割を占めていたことが明らかになった。


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