| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-276  (Poster presentation)

バイオチャー散布が暖温帯コナラ林の土壌表層に与える影響

*加藤夕貴(早稲田大・教育), 嶋田彩加(早稲田大・教育), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 本多朝陽(早稲田大・院・先進), 月森勇気(早稲田大・院・先進), 山中椎奈(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)

生物資源由来の炭化物であるバイオチャーは、土壌に散布することで栄養塩の増加や微生物活性の向上などの効果を生むとされている。近年、森林生態系を対象にバイオチャーの効果に着目した研究は見られるようになったが、特に炭素循環プロセスにおいて重要な役割を持つ土壌圏に焦点を当てた研究は少ない。土壌は表層から新鮮な落葉落枝が蓄積されたL層、腐植に富んだF・H層、有機物に富むA層などから構成されている。本研究ではバイオチャーを散布した森林においてL層、F層の厚さを測定することで、土壌表層の有機物の分解と供給過程の違いを明らかにすることを目的とした。

 暖温帯コナラ林において、散布量の異なる0、5、10、 20t/haの実験区画(1m×1m)を1つずつ設置した。それぞれの区画に観測用の土壌断面を3面作り、開閉可能なアクリル板をそれぞれの断面に設置し、L層とF層の厚さを2017年5月から12月まで毎月測定した。また、土壌層の厚さの変動要因を解明するために、土壌呼吸速度(SR)と従属栄養生物呼吸速度(HR)も測定した。

 散布量の違いと各層の厚さを比較すると、各層の厚さは散布量に対応した変化を示さなかった。一方、散布区と非散布区で比較すると、散布区においてL層とF層の厚さは夏季に減少し、SRとHRは増加していた。これらのことからバイオチャー散布により土壌微生物の活性が高まり、L層とF層の分解が促進されL層とF層の厚さが減少したと考えられる。さらに散布区のL層とF層の平均分解速度を比較すると、L層とF層でそれぞれ0.015、 0.022(cm day⁻¹)となり、L層よりF層が高い値を示した。以上より、森林へのバイオチャー散布が土壌微生物の活性を高めたため、L層とF層の分解が促進されたと考えられる。さらに分解速度はL層よりF層で高い値を示したため、F層の減少をより促進させることが明らかになった。


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