| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-289  (Poster presentation)

木材中シイタケ( Lentinula edodes)菌体バイオマスと分解呼吸速度に及ぼす環境ストレスの影響

*桒山知子(日本大学), 松室諒(日本大学), 猪瀬安希子(日本大学), 千葉奈緒子(日本大学), 寺﨑巧(日本大学), 丸山温(日本大学), 小松雅史(森林総合研究所), 山口宗義(森林総合研究所)

 枯死木などの粗大有機物は、森林での炭素蓄積や栄養塩循環に関わるだけでなく、微生物などの生物の生息場所としても機能していることから、森林生態系における重要な構成要素である。粗大有機物の分解呼吸速度は、環境要因や基質要因、腐朽段階によって制御されていることが知られている。しかし、分解者である微生物バイオマスと分解呼吸速度との関係や、環境ストレスが微生物バイオマスや呼吸活性に与える影響も明らかではない。自然界における粗大有機物には、様々な種類の微生物が生息しており、微生物バイオマスと分解呼吸速度との関係を明らかにすることが難しい。しかし、ターゲットとする微生物の種数を減らすことで、微生物バイオマスと分解呼吸速度との関係や、環境ストレスへの応答を明らかにできる可能性がある。そこで本研究では、シイタケを対象菌種とし、定量PCRを用いたシイタケ菌体バイオマスの定量法を確立し、シイタケを植菌した木材中のシイタケ菌体バイオマスと分解呼吸速度との関係や、高温ストレスへの応答を明らかにすることを目的とした。まず、既知量のシイタケ菌体と木粉を混合した試料の希釈系列を用い、シイタケの絶対定量を行うために必要な検量線を得た。その結果、10-3mg/mg wood以上の濃度において定量が可能となった。次に、シイタケを植菌したコナラ木片を室内培養し、シイタケ菌体バイオマスと分解呼吸速度を2週間に1度の頻度で測定した結果、シイタケ菌体バイオマスと分解呼吸速度との間に正の相関を得られる期間があった。さらに、シイタケを植菌したコナラ木片を2ヶ月半培養後、木片に高温、湛水、乾燥の環境ストレスを与えたサンプルと環境ストレス無しのサンプルを用意した。その結果、環境ストレスによって分解呼吸速度は減少したが、シイタケ菌体バイオマスは環境ストレス無しのサンプルと比較して高温ストレスによって低下し、湛水、乾燥ストレスにより増加する傾向だった。


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