| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-004  (Poster presentation)

深層学習による衛生画像を用いた竹林識別モデルの開発

*角和暁(京都大・院・農), 渡辺俊太郎(京都大・フィールド研), 伊勢武史(京都大・フィールド研, JSTさきがけ)

近年、国内の竹林の拡大が問題視されており、種多様性の低下、土砂災害の増加等の影
響を与える可能性が懸念されている。現在の竹林分布図の作成には主に航空写真が用いら
れるが、写真の撮影や解析はコストが大きいため、リアルタイムでの竹林分布推定は困難
である。そこで本研究では低コストかつ現状をよく反映した竹林分布図を作成することを
目的とした。
 モデルの作成に深層学習を用い、Google Earthから教師画像を取得した。Google Earth
からは無償かつ撮影頻度の高いデータが取得できる。深層学習は物体識別を実現する手法
として有効で、デジタルカメラに搭載される顔識別等に利用されている。従来、深層学習
で植物群落のような不定形の物体認識は不得手とされてきたが、Ise et al. (2017)では教師
画像を細分化することでコケ群落の識別に成功した。本研究ではIse et al. (2017)の手法を
竹林に適用することで竹林識別モデルを作成した。
 モデル作成に必要な教師画像は、京都府井手町を除く近畿圏から取得した。教師画像は
細分化した後にDIGITS(NVIDIA社)に取り込み、畳み込みニューラルネットワークは
LeNetを選択してモデルを作成した。作成したモデルに「竹林のみが映った画像」および
「竹林が映っていない画像」を入力し、それぞれの画像に対して「竹林が検出される割合
」、「竹林以外が検出される割合」を正答率として算出した。
 その結果、竹林を87.9%、竹林以外を83.2%の正答率で識別できるモデルを作成するこ
とができた。このモデルに対し、近年竹林の拡大が進んでいると懸念されている京都府井
手町の画像データを入力し、環境省が提供する植生図(2012年)を用いて、従来の竹林分
布図との比較を行ったところ、植生図では竹林以外に分類されている箇所に竹林が広がっ
ていることがわかった。このことから本研究で作成したモデルが、植生図では追いつけて
いない現状の竹林の分布拡大を検出できている可能性が示唆された。


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