| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-009  (Poster presentation)

多雪地におけるブナの開葉フェノロジー:個体・個体内の相対的葉群高による違い

*西坂志帆(横浜国立大・理工), 酒井暁子(横浜国立大・環境情報)

開葉時期は植物の光獲得戦略における重要な要素の1つである。温帯落葉樹林では同種であっても成長段階によって開葉時期が異なり、下層木は上層からの被陰回避のため早く開葉することや逆に多雪地では開葉が遅れることが知られている。しかし個体内のフェノロジーの差異に焦点を当てた研究は少ない。葉の形質には個体内調節があることから、個体内の葉群の位置によっても開葉時期が異なると推測される。そこで本研究では多雪地のブナを対象に、森林内の相対樹高および個体内の相対葉群高と開葉日との関係を検討した。

福島県只見町の原生的ブナ林(下福井)とブナ二次林(楢戸)にて、前者では高木38本、亜高木17本、後者では高木34本、亜高木43本、低木22本を選定し、各木について樹冠を上部、下部に分け、7段階の開葉ランクに該当するシュートの割合を10%単位で記録した。毎木調査を行って群落構造を把握し、また各木の光環境を4段階で評価した。

下福井では樹高が低い個体ほど早く開葉し、個体内の相対葉群高は開葉日に影響しなかった。一方、楢戸では樹高が低いほど開葉が遅れる傾向があり、5.5m以下の個体で顕著だった。楢戸では個体内でも低い位置の開葉が遅かった。

ブナは前年の光環境で葉の形質が決まる。前年の夏季、下福井は樹木密度が低いため下層木や個体の下部にも十分な光が当たり、一方、楢戸は樹木密度が高く光の垂直勾配が強かったと推察される。また樹木密度が高い後者では融雪も遅かった可能性がある。以上のことから多雪地では、陽葉を明るい時期に早く展開させるとの適応的反応と、積雪の影響による受動的反応の両方によって、林分の発達状況によって開葉フェノロジーの個体間・個体内パターンが変化することが示唆された。


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