| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-010  (Poster presentation)

三浦半島における海崖草本植物群落の群落組成と立地条件

*鐵慎太朗, 星野義延(東京農工大学大学院)

 神奈川県の三浦半島の海岸部には海崖が発達し、関東地方沿岸の固有分類群を含む多様な草本からなる草本植生が成立する。草本植生を構成する植物群落とそれらの立地条件の把握は本地域の海岸フロラの保全の一助となり、砂丘植生と比較して研究が不十分な海崖植生の成立要因を解明する上でも重要であると考えられる。そこで本研究は三浦半島における海崖草本植物群落の群落組成と立地条件の解明を目的とした。
 調査地内の120地点で植生調査を実施した。立地条件は土壌特性(土壌硬度、土壌深、土湿)、露岩率、傾斜、斜面方位、汀線からの最短水平距離、海抜を各地点で記録し、湿性地では停滞水域の有無、陸域からの表流水の流入の有無も記録した。2017年台風第21号の通過後には高潮の到達痕跡を確認した。群落区分はTWINSPANで行い、各群落の指標種は指標種分析で求めた。
 TWISNPANの結果、AからFの6グループとその下位グループに群落区分された。Aはエノシマススキやイソギクが主に優占し、ワダンとハマエノコロが指標種のA1とコマツナギやハマシャジンなどが指標種のA2に細分された。Bはシバが主に優占する群落である。CからFは湿性地に成立する群落であり、Cはシオクグやヨシ、Dはイソヤマテンツキやヤマイ、Eはナガミノオニシバ、Fはホソバハマアカザが主に優占していた。AとBの立地条件を比較すると、シバが優占するBで土壌硬度が高かった。A1とA2を比較すると、A1で急傾斜かつ土壌硬度が低く、土壌深が浅い傾向があり、A2はより安定した立地に成立していると考えられた。また、A2は他群落と比較して高海抜に位置する傾向があり、高潮の影響を受けた割合が低く、低頻度の大規模攪乱の影響も受けにくいと考えられた。湿性地の各群落は、停滞水域の有無や表流水流入の有無、土壌深、海抜などと関係がみられた。以上より、調査地の海崖草本植物群落の群落組成は、多様な環境条件の影響を受けて成立しているといえる。


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