| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-074  (Poster presentation)

葉齢に伴うケイ素の蓄積は葉の光合成速度と関係するのか?

*梶野浩史, 北島薫(京都大学農学研究科)

背景
ケイ素は植物のストレスを軽減する有用元素である。ケイ素は蒸散に伴い葉に運ばれ、一度葉内に入ると転流はされず、落葉まで葉内にとどまる。土壌水のケイ素濃度及び葉の蒸散量が葉のケイ素含有量に影響することが作物などで報告されているが、野外において葉のケイ素集積の種内変異を検証した研究は少ない。良好な光環境下でよく成長する枝においては個葉の蒸散量も高いと考えられるため、光環境と成長は葉へのケイ素集積の種間差に影響する可能性がある。本研究では1. 速く成長する枝においては、葉齢に伴う葉へのケイ素集積速度も速い。2. 光環境が良好な枝では葉齢に伴う葉へのケイ素集積速度も速いという二つの仮説を立てて実験を行った。
方法
京都市内の私有地に半自生するカジノキ5個体の24本の当年枝にて、葉の生産と生存を2017年6月から12月にかけて約1週間ごとに記録した。9月に個葉の光環境を測定し、葉を採取して乾燥・粉末化した。85°Cの1%炭酸ナトリウム水溶液でケイ素を抽出し、モリブデンブルー法にて定量した。落葉後の1月に枝の成長の指標として当年枝の茎を採取し、乾燥重量を測定した。葉齢に伴うケイ素の集積と光環境の低下を、クロノシーケンス法を用いて評価した。
結果と考察
9月まで葉を生産し続けた枝においては葉齢に伴い葉のケイ素含有量が増加し続けた。被陰されて新葉の生産をやめた枝では、老齢の葉は展葉時よりも高いケイ素含有量を示したが、成長を続けた枝の同齢の葉よりはケイ素含有量が低かった。枝ごとに推定された個葉のケイ素集積速度と、ケイ素集積速度と枝の成長及び光環境の間には同一個体内で正の相関がみられた。この結果から植物体内においてケイ素は光環境が良く、光合成量蒸散量が共に高い枝においてより多く集積されることが示唆された。


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