| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-083  (Poster presentation)

タイ北部に生育する落葉性チークの形成層活動の季節変化

*太田浩斗(三重大学)

タイ北部に生育する落葉広葉樹であるチーク(Tectona grandis Linn. f.)では,雨季の開始・終了時期の年々変動に応じて展葉・落葉時期が年々変動すること,そうした葉のフェノロジーの決定要因が土壌水分条件であることが報告されている.しかしながら,この地域のチークの形成層活動の季節変化やその決定要因については明らかにされていない.そこで本研究では,タイ北部に生育するチーク2個体について形成層活動の開始・鈍化・休眠時期を把握するため,マイクロコアサンプラーを用いて15ヶ月間1週間おきに採取したコアサンプルの顕微鏡観察を行い,形成層帯の細胞層数,分化中の木部細胞層数,それらの和である形成中木部の細胞層数を調べた.また,道管径の違いによる早材・晩材の区別や偏光観察による二次壁肥厚の有無の区別を行った.これらと土壌体積含水率などの環境条件や,葉面積指数など葉のフェノロジーと比較することで,チークの形成層活動の決定要因について考察した.形成層帯の細胞層数は雨季中の5月~9月に高い値を示し,雨季終了前の9~10月に減少し始めた.その後,乾季である11月後半から3月後半まで低い値を維持し,雨季開始と同時期の4月初旬に再び増加した.これらの結果より,土壌水分の上昇によって開芽と同時に形成層活動が開始すること,活動活発な時期には土壌水分の影響を受けないことが明らかになった.一方,形成層活動の鈍化開始は土壌水分の影響を受けず,遺伝子レベルでの制御があることが示唆された.


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