| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-084  (Poster presentation)

宿主のフェノロジーに依存した完全寄生植物ヤセウツボの最適成長戦略

*吉鴻一, 種子田春彦, 寺島一郎(東京大学・院・理)

完全寄生植物は、炭水化物や無機塩、水、アミノ酸といった生育に必須な物質のほとんどすべてを宿主植物からの収奪に依存している。ハマウツボ科の植物では、栽培植物の根に寄生して維管束を連絡させて物質を収奪し、農業生産への深刻な被害が報告されている。こうした宿主植物の成長への負の影響が強調されがちであるが、一方で、光合成のできない完全寄生植物では、宿主個体の成長を低下させすぎると収奪できる資源は減少し、さらには周囲の個体との光競争により宿主が枯死してしまう危険性もある。本研究では、完全寄生植物であるヤセウツボ(Orobanche minor)を想定し、一回繁殖型の越年草の根に寄生して資源を収奪する状況における最適な生活史戦略を理論的に予測した。数理モデルでは、宿主植物は葉と根からなり、1日当たりの成長速度を根からの窒素の吸収能力で決まる葉の窒素濃度によって決まることを仮定した。また、寄生植物は、宿主植物の根に投資される炭水化物や窒素を収奪することとした。その結果、寄生植物の成長は、資源となる炭素を収奪する割合で一義的に決定するわけではなく、宿主植物のフェノロジーに沿って変化するソース活性に依存していることが明らかになった。


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