| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-096  (Poster presentation)

鉱山跡地に自生する陰生植物アオキ(Aucuba japonica Thunb.)の重金属耐性と内生菌の関与

*土山紘平(筑波大院・生命環境), 山路恵子(筑波大・生命環境系), 石田厚(京都大学), 森茂太(山形大学農学部), 春間俊克(筑波大院・生命環境), 中本幸弘(筑波大院・生命環境)

アオキ(Aucuba japonica Thunb.)はミズキ科アオキ属の常緑低木樹で、調査地である鉱山跡地に侵入樹種として生育しており、重金属耐性を有していると考えられる。また近年、植物と共生する内生菌が、重金属と錯体形成するシデロフォアを産生することで重金属を無毒化し、宿主植物の重金属耐性を増強することが知られている。本研究の目的は植物-内生微生物相互作用に着目し、アオキの重金属耐性機構を植物および内生菌の機能の点から解明することである。
 調査地はリョウブやクマノミズキの落葉混交林で、林床に多くのアオキが生育している。2016年7月と2017年1月に、根域土壌、根、枝、葉を採取し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて、含有元素濃度を測定した。根に含まれる重金属解毒物質は、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、根における重金属の局在は共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。また、表面を滅菌した根をMalt extract培地に置床することで内生菌を分離した後、根に高濃度で検出されたZnおよびCdと錯体形成するシデロフォア産生能を評価した。 
 アオキは、夏期と冬期において根に高濃度のZnおよびCdを蓄積していた。根には有機酸のmalic acid、citric acid、およびイリドイド配糖体のaucubinが高濃度で含有されており、重金属耐性に関与している可能性が示唆された。共焦点顕微鏡観察の結果、Znは根の表皮細胞の細胞壁および内部、皮層の細胞間隙、中心柱に局在しており、有機化合物とのキレート化によって無毒化されている可能性が考えられた。またCryptosporiopsis属糸状菌が夏期と冬期において高頻度で分離され、高いシデロフォア産生能を示した。今後は、有機酸やaucubinの機能を明らかにするとともに、内生菌との相互作用を明らかにするため、接種試験を行う予定である。


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