| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-142  (Poster presentation)

管理手法の異なる里山棚田景観における土壌動物群集を用いた環境指標の開発

*古郡憲洋(新潟大学院), 岸本圭子(新潟大学研究推進機構), 本間航介(新潟大学農学部)

近年、多様な環境がモザイク状に連続する里山には多くの絶滅危惧種が存在す一方、過度な圃場整備等による景観の分断やそれに伴う生物多様性の低下が問題となっている。里山景観の移行帯の連続性のうち、景観的連続性に関する研究は広く行われている一方、水分、光、温度などの環境的連続性及びそれが生態的連続性に与える影響は、これまでほとんど評価されていない。本研究では、景観的連続性の異なる里山における土壌動物群集の分布と環境要因の変化を比較し、景観の分断が環境的及び生態的連続性に与える影響について評価した。
新潟県佐渡市小佐渡周辺の景観的連続性が高い里山と、圃場整備により景観が分断された里山において、畔~林内に跨る長さ40~80mのベルトトランセクトを6本ずつ計12本設置した。各ベルトの畔2地点、林縁1地点、林内2地点においてハンドソーティング法とツルグレン装置を用いて土壌動物の抽出を行った。採取した土壌動物を食性別の8種の機能群に分類し、各地点の土壌動物群集の機能群組成を比較した。各地点の土壌水分量、土壌硬度、開空率、リター量を測定し、環境分析を行った。
景観的連続性が低い里山において土壌水分量、リター量は林縁を境に有意な変化が確認された。また、景観的連続性の高い里山では景観の移行に伴う有意な変化は確認されなかった一方、各調査地の環境の差は大きかった。
景観的連続性が高い里山の畔~林内における土壌動物群集の機能群組成の類似性は高く、調査地点ごとの違いは土壌動物の総個体数のみであった。一方、景観的連続性の低い里山では、畔においてササラダニ亜目、アリ科などの種が局所的に集中する地点が確認され、畔の土壌動物群集の機能群組成に変化が生じた。これは景観の分断による土壌動物の移動の制限や、畔では農作業による人為的攪乱が定期的に発生することから、これらの変化に適応した種が優先したためであると考えられる。


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