| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-169  (Poster presentation)

島嶼河川における魚類の河川遡上とその規定要因

*満尾世志人(新大 朱鷺・自然再生), 飯田碧(新大 臨海実験所), 小黒環(新大 臨海実験所)

島嶼河川における淡水魚類相は、川と海を往来する生活史を持つ回遊性のグループが主要構成種となる。こうした河川では、海から河川への遡上が河川内における魚類群集の構造に強い影響を持つと考えられるが、河川遡上について横断的に調べられた事例は乏しい。本研究では、島嶼河川における魚類群集の構造特性について考察することを目的とし、佐渡島の20の沿岸河川において魚類の生息状況及び河川加入状況について調査を実施した。
小型定置網による調査の結果、合計で1519個体が採捕された。採捕された魚類の大部分が通し回遊性の種であり、スミウキゴリの採捕数が最多となり、ついでミミズハゼ、ヨシノボリ属、シマウキゴリとなった。特にスミウキゴリは、採捕された個体の大部分が体長30mm前後であったことから、海から河川への加入個体を捕らえたものであると考えられた。種ごとの採捕個体数を用いたNMDSによる解析の結果、計測した環境特性(水理、水質、河床材料、護岸状況、防波堤設置の有無、流域面積及び非森林面積)のうち遡上魚類の組成と関連が認められたのは流域面積及び河床材料であった。一般的に本研究で対象としたような小規模河川では天候の影響よる環境変動の程度がより強いとされており、流域面積と種組成の関係は生息環境としての安定性を反映したものと考えられる。また、河床材料が抽出された点については、本調査地で出現した魚類の多くが底生魚であったことが関連していると考えられた。
遡上種数を目的変数とし、上記の環境条件を説明変数としたGLMの結果では、主な関連要因としてNO3-が抽出された。硝酸態窒素は林相や地表攪乱などを評価する指標として有効であるとされていることから、本研究結果は流域における土地利用の変化が通し回遊魚の河川利用に影響を及ぼす可能性を示唆しているものと考えられた


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