| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-172  (Poster presentation)

河床の構造と群集構成期間が底生動物群集の構造に与える影響

*斎藤裕美(東海大学)

 底生動物群集の多様性をあげる現象は河床構造の高い複雑性にて多く確認されるが、確認されないケースも存在する。その要因として高い時間変動をもつ底生動物群集の特性は河床構造の効果に影響するものと推察できる。そこで、本研究では3つの期間にて、4段階の複雑性を操作した人工基質上の底生動物群集を分析し、時間的変動と河床の構造変動が底生動物群集に及ぼす効果を検討した。2016年9月26日から6週間、3週間、1週間、人工基質を河床に設置し、11月7日に全ての基質を回収した。複雑性は基質の作成時に素焼きのレンガの上面に、複雑性の異なる粘土タイルを接着することで4段階に操作した。底生動物群集の指標に関して、期間と複雑性を要因とした繰り返しのある二元配置の分散分析をおこなった。本研究の結果、採集された底生動物は、29分類群、9808個体であった。タクサ数と個体数では設置期間と複雑性に有意な交互作用がみられた。単純主効果では、期間の6週間と3週間および1週間に有意な差があり、個体数でのみ複雑性の効果が確認された。バイオマスに関しては期間の要因でのみ有意な差があらわれた。多様性にて、有意差はみられなかった。本研究では、底生動物群集の個体数は6週間にてはじめて複雑性の影響を受け、構造が複雑なほど個体数が増加することが示された。一般的には、底生動物の群集形成にて6週間は十分な期間であるが、本研究で複雑性に関して有意な群集形成に時間を要した原因のひとつとして、落葉の影響が考えられる。落葉による著しい個体数の増加に複雑性の影響が隠れており、期間との相乗的な効果により6週目にして複雑性の影響が有意になったと考えられる。今後は、落葉の影響を明らかにするため、本研究とは異なる季節に研究をおこなう必要がある。


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