| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-249  (Poster presentation)

オオキトンボの産卵環境が幼虫数とサイズに与える影響

*村上裕(愛媛生物多様性センタ), 久松定智(愛媛生物多様性センタ), 武智礼央(NPO森から続く道), 黒河由佳(NPO森から続く道), 松井宏光(NPO森から続く道)

二次的自然環境として水田やため池を産卵場所として利用するトンボ類は、水稲の生育ステージやため池の植生、周辺環境等が種の存続を図る環境と合致していた、若しくは多少のズレを許容し、水田面積の拡大とそれに伴うため池の造成と共に安定的な分布域を形成したものと考えられる。本研究は、ため池を主な産卵場所として利用するオオキトンボ(環境省RDB1類、愛媛県RDB2類)を対象種とし、ため池の管理状況と幼虫の発生の関係を明らかにすることを目的に現地調査と室内試験を実施した。現地調査は例年本種が確認されているため池のうち、3地点を調査対象池とし、ため池周縁部を調査ラインとした時期別の目視調査による成虫数カウントを、未成熟個体と成熟個体を対象に行った。併せてため池の詳細な管理状況を把握するために、ため池管理者に聞き取り調査を行った。室内試験は、現地調査を行った3地点において、満水帯から最低部に向かって1m間隔の3地点に20㎝×50㎝のコドラートを設置し、卵を含む可能性が高い砂礫を採集した。砂礫は現地でのため池の管理状況と合わせて2月末まで乾燥状態で室外の雨よけ施設で保管し、ため池の入水が始まる3月上旬に全ての処理区を満水状態にして管理した。各区の孵化した幼虫数をカウントし、併せて頭腹長を計測した。調査の結果、現地調査で産卵行動は確認されるものの未成熟個体が確認出来なかったため池は、室内試験において孵化幼虫が確認出来なかった。孵化幼虫が確認されたため池間を比較すると、幼虫数と頭腹長はため池間に差が認められたが、満水帯からの距離が孵化幼虫数と頭腹長に与える影響は一様ではなかった。孵化幼虫数と頭腹長は、調査対象地域で毎年実施されている池干しの開始時期と減水速度が影響を与えていることが示唆された。


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