| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-267  (Poster presentation)

火入れ草原における刈り取りの付加による草原性植物の開花の変化

*井上雅仁(島根県立三瓶自然館), 高橋佳孝(西日本農研センター)

島根県三瓶山西の原のススキ草原では,毎年春季に草原景観を維持するために火入れが実施されている.草原内にはクロスカントリーや散策に用いられる遊歩道があり,一般来訪者に利用されている.火入れはススキ草原の維持に効果的であるが,採草や放牧などの他の管理との組み合わせにより,種多様性に変化が生じることが知られている.また,遊歩道周辺は来訪者のために草原性植物の開花を促す方策が求められている.そこで,当地のススキ草原に刈り取り管理を付加し,草原性植物の開花数の変化を調査することで,刈り取りによる開花促進の効果について検証した.
2012年春に,散策道に沿って長さ24m,幅3mの調査区を3箇所設置した.そのうち,半分にあたる長さ12mの範囲は,刈り取り管理を付加する区とした(草刈り区).刈り取りは,2012年から2017年の夏季(6月下旬~7月上旬)に,刈払機を用いて年1回実施した.残りの半分は火入れのみの管理とした(対照区).それぞれの区内には,1m四方の方形区を1m間隔に5個ずつ設置した.各方形区において,2012年以降の毎年秋季に出現植物種,各種の草丈と植被率を,2012年の以降の毎年5月,7月,9月には開花茎数を記録した.
秋季の植生は,対照区では継続してススキが優占し,植生高が1mを越えていた.一方対照区では,優占種はススキからトダシバやチガヤへと,植生高は0.5mを下回る状態へと変化した.開花茎数については,春咲きの種であるスミレ,キジムシロ,ミツバツチグリや,秋咲きのシラヤマギク,ウメバチソウなどが草刈り区で多い傾向にあった.一方,夏咲きのオカトラノオ,ツリガネニンジンなどは,対照区の方が多い傾向にあり,草刈り区ではこれらの花茎が伸長する時期(夏季)に刈り取りが行われたために少なかった.


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