| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-276  (Poster presentation)

主伐方法の違いは源流域における底生動物の生息環境と群集構造に影響するか

*長坂晶子(道総研林業試験場), 長坂有(道総研林業試験場), 速水将人(道総研林業試験場), 山田健四(道総研林産試験場)

北海道中央部のトドマツ人工林小流域において、伐採前後の物理環境・有機物貯留量および底生動物相を調査し、伐採方法の違いが底生動物の生息環境にどのような影響を及ぼすか検討した。流域面積5~10haのトドマツ人工林10流域を調査地として設定し、2013年10月に伐採前調査を行った。その後2015年5~8月に4流域で広葉樹の保残率を変えて(皆伐・広葉樹少量保残・中量保残・大量保残)伐採が実施され、伐採当年、翌年、2年後の10月に伐採後調査を実施した。メッシュサイズ8㎜の金網で作製したカゴに礫径2~8cmの礫を予め入れて各流域5個ずつ計50個を渓床に埋設し、1ヶ月後に取り出し試料処理を行った。その結果、カゴを埋設した場所は①細粒有機物量が顕著に多い場所、②粗砂・細砂が顕著に多い場所、③流速が早い場所、④礫の隙間が多い場所の4つのタイプの底質環境に分けられた。また、①ではフタスジモンカゲロウ、②はコカゲロウ属、③はコエグリトビケラ属、④は端脚目エゾヨコエビ、などが標徴種として抽出され、それぞれの環境をよく反映していた。伐採当年と翌年の夏期、時間雨量20mm超の大雨によって、皆伐および少量保残流域では河床が大きく攪乱され、その結果、河床に厚く堆積していた細粒有機物や土砂が洗い出され、①、②主体の環境から④主体の環境へとシフトし、底生動物相も変化した。一方、大量保残流域では調査区間の上流で重機が沢を横断し林床の表土を流出させたため、細粒有機物の堆積量が増加し、③、④主体の環境から①主体の環境へとシフトし、その傾向は伐採翌年まで継続した。本調査地では、主伐方法の違いは、保残木樹冠の有無による降雨遮断量の違い、ひいては降雨時の直接流出量の増加と河床撹乱の程度に反映されたとものと考えられるが、広葉樹保残の多寡に拘わらず、渓畔域の人為撹乱を伴った場合には底生動物の生息環境に影響を及ぼしうることも示唆された。


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