| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-281  (Poster presentation)

ガガブタ多芽体の作出と超低温保存

*上原歩(東電大・理工), 三國智葉(東電大・院・生命理工), 飯塚郁穂(東電大・理工), 栗山昭(東電大・理工, 東電大・院・生命理工)

 ガガブタ(Nympoides indica:ミツガシワ科)は多年生の浮葉植物であり、湖沼やため池に生育する。日本では本州や四国、九州に自生することが知られるが、環境省の発行するレッドリストにおいて準絶滅危惧に指定されている。希少植物の繁殖に無菌培養技術を用いることは広く知られている。植物の無菌培養技術の中には一般的に知られるカルス以外にも、芽の集合体である多芽体がある。これは植物体への再成長がカルスより容易であり、また再成長により多個体を確保することが出来る。また、近年は超低温保存による種の保存が試みられおり、個体数を容易に確保できる多芽体の保存は絶滅危惧植物の保全に有効な手段と考えられる。本研究ではガガブタの多芽体の作出、およびこれの保存法を確立するため、超低温保存をおこなった。
 ガガブタの多芽体は、無菌培養している植物体の葉を5 mm四方に切断し、得られた葉切片を植物ホルモンを調製した固形培地に置床して誘導した。培地は、Murashige-Skoogの基本成分(MS培地)にショ糖3% (w/v)を基本培地とし、サイトカイニンとしてチジアズロン(TDZ)、オーキシンとしてナフタレン酢酸(NAA)を各種濃度で添加したものを用いた。
 超低温保存は細胞外凍結を誘導し、浸透圧差を利用して細胞内の水分を脱水後に液体窒素中で保存する予備凍結法をもちいた。予備凍結法には28日周期にて継代された多芽体を供試し、継代5日後にショ糖濃度を3、5、10、15%(w/v)に調製した培地で一定期間、前培養を行い、凍害防御剤処理を経た後に凍結保存した。保存後の多芽体を急速融解し、再培養28日後の生存率を測定したところ、ショ糖5%で前培養をおこなった個体で生存率の高くなる傾向が見られた。また前培養の期間によっても差が見られ、2日間培養したもので最も高くなった。


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