| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-284  (Poster presentation)

山小屋や登山者によるライチョウの生息状況把握

*堀田昌伸(長野県環境保全研究所), 高野宏平(長野県環境保全研究所), 津山幾太郎(森林総合研究所), 比嘉基紀(高知大学), 尾関雅章(長野県環境保全研究所), 中尾勝洋(森林総合研究所), 松井哲哉(森林総合研究所), 竹内祥生(信州大学), 畑中健一郎(長野県自然保護課)

ライチョウの生息状況は、専門家が繁殖期に個体確認や生活痕跡などからなわばりを推定し把握してきた。しかし、調査困難な高山のため、乗鞍岳や立山室堂のように個体に標識し詳細な調査を実施しているところは少なく、多くの山域では過去1回から数度の調査にとどまっている。
そこで、登山者によるライチョウ情報を活用して、ライチョウの生息状況をうまく把握できないかを検討した。長野県環境部自然保護課では、2011〜2012年度にライチョウポスト設置事業を実施し、北アルプス北部・南部の長野県内や県境にある51の山小屋にライチョウ等確認情報記入用紙をおき、登山者に確認したライチョウ等の情報を記入してもらった。2011年度に1,470件、2012年度に1,493件のライチョウ情報が寄せられた。
これら登山者によるライチョウ観察情報のほぼ全てが、登山道から50m以内であり、山小屋が営業している7月から9月までの間、つまり、母子の群れの時期であった。登山者によって観察されたヒナ数のモデルは、N-mixtureモデル(発見率込みで個体数を推定するモデル)とOccupancyモデル(産卵数と捕食圧(率)、発見率をもとに個体数を推定するモデル)で構築した。発見率に影響を及ぼす要因として、天候(4区分)、ガスの有無(2区分)、観察者による誤差、および環境変数として、尾根からの距離(対数)、高山植生(風衝群落、雪田草原群落、そしてハイマツ群落)の面積率(対数)を考慮した。解析の結果、ヒナ数の予測値は登山者による観察値とよく一致した(Correlation coefficient = 0.913)。捕食圧(率)には日数が有意に効いていることが明らかとなった。また、発見率には、天候とガスの有無、風衝群落の面積率、ハイマツ群落の面積率が有意に効いていることが明らかとなった。


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