| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-288  (Poster presentation)

日本産維管束植物の湿地依存度評価に向けて

*首藤光太郎(新潟大学教育学部), 山ノ内崇志(高知県立牧野植物園), 加藤将(日本国際湿地保全連合), 志賀隆(新潟大学教育学部)

 湿地は多様な生態的機能を有し,多面的な生態系サービスを供給する重要な環境である.しかし,様々な人為的影響(開発,汚染等)により,世界の湿地の約6割が1900年代以降に消失し,日本においても同様に消失・劣化が著しい.湿地の保全は急務であるが,効果的な保全を実施するためには湿地の評価手法の確立が必要である.米国や韓国では,湿地の現状を把握する一つの軸として維管束植物相に着目し,各分類群の水環境への適応の程度をランク分けした「湿地依存度」リストが構築され,実用に至っている.日本でも,このようなリストを用いた湿地の評価は有効であろう.そこで 本研究では,日本国内に生育する植物種の湿地依存度リストの構築を目的とした.
 生態や群落の情報をまとめたデータベースを構築するため,図鑑の記載から生育環境の情報を収集した.情報源とした複数の文献間での和名の不一致を解消するため,GreenList ver 1.01 (Ito et al. 2016, Ebihara et al. 2016) で用いられている和名を標準和名ととして扱い,『改訂新版日本の野生植物1~5』(大橋ほか 2015~2017),『日本産シダ植物標準図鑑1, 2』(海老原 2016, 2017),『日本維管束植物目録(米倉・邑田 2012)』で使用されている異名を統合した.次に,各種図鑑の生育環境や生活史についての記述をもとに,国内に生育している維管束植物の湿地依存度を4段階で評価した.沈水・浮遊・浮葉植物をランク1,沈水・浮遊・浮葉形をもたない抽水植物をランク2,「湿原」やこれに準じる生育環境の記載が見られる湿生植物をランク3,湿地と関係のない生育環境が記載された植物をランク4とした.また,生育環境が記されておらず湿地依存度を評価できなかった種類は「未評価」とした.今後,実際の湿地の群落データに基づきランク付けの妥当性を検証する予定である.発表では,リストの内訳や現段階での課題についても紹介する.


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