| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-291  (Poster presentation)

揖斐川の河道内氾濫原におけるカエル類の生息状況 ―野外調査と河川水辺の国勢調査からの検討―

*田和康太(土木研究所河川生態), 永山滋也(岐阜大学流域圏科学), 萱場祐一(土木研究所河川生態)

2017年の5月下旬から6月上旬に揖斐川の河道内氾濫原および河道外周辺の水田域においてカエル類の生息・繁殖状況を調査した.また,河川水辺の国勢調査データから,揖斐川におけるカエル類の生息状況を抽出した.
野外調査では,各調査地において日中にカエル類幼生を対象とした掬い取りおよび成体・亜成体を対象としたラインセンサスを実施した.それに加え,夜間にはカエル類の繁殖期に発する鳴き声の聞き取りを行った.河川水辺の国勢調査データについては,2002年に揖斐川において実施されたものを用いた.
野外調査では,ニホンアマガエル,トノサマガエル,ナゴヤダルマガエル,ツチガエル,ヌマガエルそしてウシガエルの計6種が記録された.ウシガエルを除く在来種5種について水田域と比較すると,ニホンアマガエル,トノサマガエル,ナゴヤダルマガエル,そしてヌマガエルの計4種については,ラインセンサスで記録された個体数や繁殖期の鳴き声を発していた個体数が水田域において顕著に多かった.その一方で,ツチガエルの繁殖期の鳴き声は河道内氾濫原のみで記録され,また,ツチガエルの越冬幼生も河道内氾濫原のみで採集された.さらに,河川水辺の国勢調査において,揖斐川ではツチガエルが記録されていた.これに加えて,今回の野外調査ではみられなかったニホンアカガエルも記録されていた.
調査地では,ニホンアマガエル,トノサマガエル,ナゴヤダルマガエル,ヌマガエルといったカエル類は水田域を主な生息・繁殖場所としていると考えられた.その一方で,生活史の中で一部の個体が幼生越冬するツチガエルや,冬期から早春期にかけて産卵するニホンアカガエルなどの農閑期に水域を必要とする種については,圃場整備の進行した調査地の水田域では,農閑期に水のある水田や土水路が少ないことから,通年水域が存在する河道内氾濫原が重要な生息および繁殖場所の一つとなっている可能性が示唆された.


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