| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-306  (Poster presentation)

雪解け時期の早まりが土壌呼吸に与える影響: 大面積操作実験による検証

*片山歩美(九大演習林), Semyon V Bryanin(ロシア科学アカデミー), 高木健太郎(北大FSC), 小林真(北大FSC)

温暖化により雪どけが早まると、森林生態系の機能が変化する可能性がある。そのひとつとして、雪どけの早まりは、環境要因(土壌水分や地温)の変化や植物の応答(細根バイオマスやリター量)を介して土壌呼吸の量や発生メカニズムを変化させることが考えらえる。本研究では、処理区および対照区それぞれ20m四方×4林分にて、ジェットヒーターを用いて森林の雪解け時期を2週間ほど早める大規模操作実験を行い、雪どけの早まりが土壌呼吸の量や発生要因に与える影響を明らかにすることを目的として行われた。本研究では、北大中川研究林の針広混合林において、雪どけ処理前の1年、雪どけ処理1年目および2年目の3年間、各試験区において4地点ずつ土壌呼吸速度および土壌呼吸の発生メカニズムに関する要因の測定を行った。処理前および処理後1年目2年目ともに雪どけが完了した直後の5月初旬の土壌呼吸には処理間で有意な差は見られなかった。地温は、処理区の方が低かったものの有意差はなかった。土壌水分にも処理間で有意な差はなかった。細根バイオマス、腐食層の厚さ、年間のリターフォール量も処理間では有意な差はなかった。本試験地における雪どけ早期化の処理により、土壌中の窒素の無機化速度が増加し、下層植生のクマイザサの伸長成長が促進されたことが確認されたが、本研究において、土壌呼吸に影響するような処理の効果は見られなかった。雪除去実験や土壌を直接暖める実験に基づく既存研究では、環境要因の変化により土壌呼吸量が変化することが報告されているが、自然条件に近い大型野外実験を用いた本研究では、雪どけが1-2週間程度早くなったとしても、土壌呼吸を発生させる要因への影響は小さく、その結果、CO2放出量への影響も小さいことが示唆された。


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