| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-315  (Poster presentation)

冷温帯二次林の土壌呼吸速度と樹液流束速度の環境応答

*安立美奈子(筑波大学生命環境), 廣田充(筑波大学生命環境), 井田秀行(信州大学教育学部), 斎藤琢(岐阜大学流域研)

 生態系の炭素循環において土壌呼吸量は、光合成生産量の次に大きな炭素の流れであるため、長年多くの生態系において研究が進められてきた。土壌呼吸量の半分近くを占めると言われる根の呼吸は、地温だけでなく樹木の光合成や水分生理と深く関係すると考えられる。本研究では、冷温帯林の主要な構成種(アカマツ、ミズナラ、ブナ)の樹液流束速度と土壌呼吸速度の時間的変動と環境要因との関係を解明することを目的とした。
 観測は、長野県上田市の筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所のアカマツ、長野県下高井郡のカヤノ平高原のブナ、岐阜県高山市の岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地のミズナラでおこなった。これらの3樹種においてグラニエ法による樹液流束速度の観測と、アカマツ林では土壌呼吸速度の連続測定を行った。観測は2016年、2017年のそれぞれ4月から11月までおこなった。
 樹液流束速度は日射量や気温の日変化とほぼ同じ変化を示したが、常緑樹のアカマツは11月下旬になると日射量よりも気温の影響を強く受けることが示唆された。一方で落葉樹のミズナラとブナは落葉する間際まで蒸散をおこなっていることが示唆された。また、アカマツ林の土壌呼吸速度の日変化は地温と共に、樹液流束速度の日変化よりも遅れて午後にピークになることが観察された。従って、樹液流束速度の日変化は土壌呼吸速度に大きな影響を与えていないことが示唆されたため、今後は根の呼吸速度を直接測定して樹液流束速度との日変化の関係を明らかにしたい。


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