| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-317  (Poster presentation)

冷温帯二次林における遷移にともなう植生構造と植物バイオマスの変化

*廣田充(筑波大・生命環境系), 中田貴子(筑波大・山岳科学プロ), 大塚俊之(岐阜大・流域圏セ)

森林は、陸域生態系の重要な炭素の吸収源である。そのため、世界中の森林においてCO2交換量や炭素蓄積量に関して多くの研究が行われて、様々な森林の炭素吸収量のみならず、その時間的・空間的変動パターンとその要因がほぼ解明されつつある。そんななか、森林の遷移にともなう炭素吸収量の時間的変動に関しては、遷移にともなう変化を記述できるような長期観測データが少ないこともあり、未だにデータの空白域となっている。このギャップを埋めるべく、本研究では遷移が進行中の林齢が異なる複数の二次林の長期観測データを用いて、遷移にともなう森林の炭素蓄積量の時間的変動パターンを明らかにすることを目的とした。
 本研究は、筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所内の二次林に設置した長期固定調査区(50m x 200m)を対象として行った。同調査区は、アカマツが優占する針葉樹林(林齢約55年)と、アカマツに加えてミズナラとシラカバが優占する針広混交林(林齢約80年)を含むように設置されている。両林分は同一平地上に隣接しており、いずれもかつては採草放牧地として利用されていた。これらの状況から、両林分を含む調査区は、遷移にともなう森林生態系の変化を理解するうえで最適なフィールドであるといえる。同調査区では、演者らによって2009年から現在に至るまで毎年1回毎木調査と毎月1回リターフォール調査が行われており、それらの結果を用いて2017年までの9年間の植生構造と植物炭素蓄積量の変化を調べた。その結果、立木密度は針葉樹林では自己間引きのために立木密度が約5%減少した一方、針広混交林ではほとんど変化していなかった。植物の炭素蓄積量は、針葉樹林では約13%、針広混交林では約27%増加しており、それぞれ2017年の植物地上部の炭素蓄積量は127 (ton C ha-1)と120 (ton C ha-1)と推定された。


日本生態学会