| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-320  (Poster presentation)

尾瀬ヶ原・湿原地形と陸水環境の変遷に関する研究-池溏に対する洪水の影響-

*野原精一(国立環境研究所), 福原晴夫(河北潟湖沼研究所), 千賀有希子(東邦大学)

【はじめに】気候変動の影響を探るため調査を行った。「平成23年7月新潟・福島豪雨」の際の尾瀬ヶ原の洪水情報と地形情報から尾瀬ヶ原を洪水区と非洪水区に分けて比較を行った。【方法】既存の5mメッシュ標高データから原地形及び湿原内の小流域図を作成した。2017年6月に固定翼UAVを用いて上田代と中田代で高度50mから約8000枚の写真を撮影、オルソ化し合成画像と3D画像を作成した。上田代の洪水区と非洪水区から池溏40ヶ所を選び水質・底質の調査、7河川と湿原について水温・水位の連続観測を行った。上田代・中田代で湿原表層底質コアを採取して物理化学性、137Csの分析を行った。池溏水中の重要な有機物について現場チャンバー法により分解実験を行った。捕集気体中の炭酸ガスとメタンを測定、同時に池溏水中の腐植物質の量および質の変化を測定した。【結果】合成画像から川上川が網状河川に分流して上田代を流下するなど尾瀬ヶ原の詳細な地形と水の流れが把握できた。河川水位は融雪時に1.1m〜2.3m上昇し秋季には大雨による水位上昇がみられた。下ノ大堀川や東電尾瀬橋で厳冬期にも水位が上昇した。泥炭コア中の福島原発事故由来の放射性セシウムは、中田代の非洪水区で平均5919Bq/m2、上田代の洪水区で8594Bq/m2であり上田代では流域からの再流入により増加した可能性がある。池溏水の分解実験では、5℃暗所で0.12ppm/L/月のメタンが生成し、屋外で1.2〜3.0ppm/L/月のメタンの分解があった。懸濁態と溶存態を含む現場チャンバーでは、紫外線を通す石英ガラス容器で42~96 ppm/L/月のメタンと252~628ppm/L/月の炭酸ガスが発生し、紫外線カットのガラス容器では2.1~8.4ppm/L/月のメタンと954~1087 ppm/L/月の炭酸ガスが発生した。


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