| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-018  (Poster presentation)

白神山地における偽高山帯の植生とその変化

*山岸洋貴(弘前大 白神研)

白神山地は、標高1000~1200m程の峰の連なりからなり、最も高い地点でも標高1250mしかない。しかし、世界的にも稀な多雪環境や日本海から吹き付ける強風などを反映した針葉樹林を欠く亜高山帯の領域「偽高山帯」が存在し、また低標高でありながら風衝草原やハイマツ集団も存在する。これらは一般的な高山帯よりも低標高に維持されていることから、環境変化に対して極めて脆弱であることが推測される。白神山地では過去に記録された画像の経年比較から、山頂部に位置するハイマツ集団の規模縮小や風衝草原の変化などが示されており、近年の気候変動との関連が指摘される。しかし、山稜部における植生の変化とその要因を明らかにする為の調査はこれまで十分に行われておらず、その実態は不明である。そこで本研究は、気候変動が白神山地の山稜部に位置する偽高山帯域の植生や生育する樹木の生長にもたらす変化を明らかにすることを目的とした。まず偽高山帯域の現状を把握する為に、白神山地に位置するハイマツ集団と風衝草原などに注目し、それらが含まれる4地点を調査地とした。それぞれの調査地では、植生を構成する種組成および被度、面積、樹木高などを記録した。また生長量の増減を明らかにするため、ハイマツ3地点、ミヤマナラ1地点で年枝長を計測した。これまでの結果、ハイマツは過去約20年間、ミヤマナラは過去約10年間の生長量を明らかにする事ができ、それぞれ相対的な生長量が減少傾向にあることが示された。今後はサンプル数を増やすほか、年輪解析なども利用してさらに詳細なデータを得る予定である。気象条件については2016年に標高1200mに設置された気象タワーにより詳細が明らかになりつつあり、今後モニタリングを進めながら、過去に関しては近隣のデータを補正するなどし、気候変動とそれに伴う白神山地の偽高山帯域の変化について詳細を明らかにしていく。


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