| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-020  (Poster presentation)

鳥取砂丘に残るハマナス群落の構造と28年間の変化

*永松大, 山中雪愛(鳥取大学)

ハマナスはバラ科の落葉低木で,北日本の海岸砂地に生育する。植栽も多いが,日本では北海道から,太平洋沿岸では茨城県,日本海沿岸では島根県まで自生している。東西16kmにおよぶ鳥取砂丘の西端にあたる鳥取市白兎に残るハマナス群落は日本海側の自生南限地帯として1922年に国の天然記念物に指定された。1962年に国道9号が自生地と海岸の間の砂丘地に建設されると,指定地は海岸と切り離され自生地は安定した穏やかな環境に変化した。内陸性植物の侵入が容易となり,ネザサなどの内陸性植物が増えるとともに群落の一部に衰退がみられるようになった。このため2000年代に自生地由来のハマナス苗木が植栽され,現在に至っている。このハマナス群落は1988年に一度,学術的な調査が行われ,当時の状況が記録されている。本研究では改めて詳しくハマナス群落の調査を行い,現状を明らかにするとともに,1988年の調査結果と比較を行った。調査は2016年,春(5月),夏(8月),秋(11月)の3回,ハマナス群落内で植生調査を行った。あわせて1988年の調査と同様にハマナス個体の調査をおこなった。植生調査の結果,ハマナス群落内には春から夏にかけてチガヤが高頻度に出現した。ブタナやオッタチカタバミなどの外来種が多数出現した。1988年に群落内に多かったネザサは減少した。ハマナスの分布は1988年と比べ指定地外に広がっていたものの,ハマナスは内陸性草本と混生すると次第に生育が劣勢になる傾向があるとされる。指定地では6月に雑草除去が行われているが,現実には夏にかけてチガヤがさらに増加しており,ハマナスの生育環境悪化の可能性が危惧される。


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