| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-027  (Poster presentation)

対馬竜良山照葉樹林における27年間の樹木群集動態

*西村尚之(群馬大・社会情報), 立石大貴(群馬大・社会情報), 真鍋徹(北九州自歴博), 原登志彦(北大・低温研)

 現在,我が国の暖温帯地域に成立する原生状態の照葉樹林は,ほとんど残されていない.一方,これらの照葉樹林は西日本に位置することから,森林の構造・動態・樹種共存には台風などの気象現象に起因する自然撹乱が関係することが指摘されている.そこで,本研究は原生状態の照葉樹林における樹木群集動態の特徴とそれに及ぼす気象現象の影響を解明するために,長崎県対馬にある天然記念物竜良山原始林内に設置した面積1ha調査区内における胸高直径≥5cmの幹を対象とした1990-2017年の27年間のモニタリング結果を解析した.本研究では当期間中7回の毎木調査を行い,対象幹の樹種名,根元位置,階層を記録し,胸高周囲長または直径を測定した.また,死亡幹の状態を立枯れや幹折れなどに分類した.さらに,各調査時には5m×5mの各区画の林冠状態(ギャップまたは閉鎖林冠)を記録した.1990年における調査区内の生存幹数は1105本/haで,イスノキ,サカキ,ヤブツバキの順で出現本数が多く,一方,全胸高断面積合計は72.4㎡/haで,その54%をスダジイが占めていた.27年間における本林分の樹木群集の変化をみると,全体の立木密度と胸高断面積合計はともに減少傾向にあった.また,林冠状態の変化をみると,2002年までの12年間ではギャップの割合は徐々に小さくなったが,その後の15年間では大きくなる傾向にあった.同時に2007年から林冠木の死亡率が高くなる一方,新規加入率には大きな変化は見られなかった.さらに,幹直径の年増加速度の長期間における増減の顕著な傾向は見られなかった.調査地における気象変化の長期傾向をみると,以上のようなギャップ形成や林冠木の死亡率の増加には強風や大雨などの気象現象が関連しており,我が国の照葉樹林の樹木群集の動態特性を解明するためには,このような気象現象の長期変化を把握する必要性が示唆された.


日本生態学会