| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-082  (Poster presentation)

リンゴ(ふじ)着果枝における光合成産物の果実への移行・蓄積

*今田省吾, 谷享, 多胡靖宏, 久松俊一(環境科学技術研究所)

大型再処理施設から排出される放射性炭素の一部は、光合成により作物の有機物中に同化され、作物の可食部及び作物を飼料とする家畜を介して人体に取り込まれる可能性が考えられる。本研究では、青森県で広く栽培されている果樹のリンゴを対象に、安定同位体の13Cをトレーサーとして用いて、光合成で固定された炭素の果実への移行蓄積モデル構築のための予備実験として、収穫時の果実への光合成産物の移行蓄積を着果枝レベルで調査した。
実験は、農研機構果樹茶業研究部門リンゴ研究拠点のリンゴ園の12年生のふじ(JM.1台)を用いて行った。2016年6月~10月までの期間に着果枝を13CO2にばく露処理し、72時間後または収穫期に採取したばく露枝を果実、葉及び当年枝に分別して13C濃度を測定した。13CO2ばく露は果実の発達を追って逐次行い、ばく露用に製作した通気式チャンバーを3台同時に用いた。着果枝内の光合成固定炭素の挙動を記述するためのコンパートメントモデルを構築し、果実、葉及び当年枝中の果実発達段階別炭素量及び13C濃度を用いて、最小二乗法によりモデル中のパラメータを推定した。
ばく露実験の結果、果実発達段階の初期に固定された炭素は、中期及び後期と比べて、収穫時の果実に残りにくい一方、葉及び当年枝では、初期に固定された炭素が残りやすいことが明らかとなった。収穫時の果実中13C濃度推定値は、果実発達段階の後期において過小評価されたものの、実験値と概ね一致した。これにより、着果枝レベルではあるが、任意の果実発達段階にばく露した放射性炭素の収穫時における果実中残留濃度の推定が可能となった。
(本発表は、青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。)


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