| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-101  (Poster presentation)

ススキの内生菌Chaetomium cupreumが産生するsiderophoreのAl解毒能力の評価

*春間俊克(筑波大院・生命環境), 山路恵子(筑波大・生命環境系), 升屋勇人(森林総研・東北支所), 小川和義(筑波大・生命環境系)

 ススキはAlが植物毒性を示す酸性土壌においても優占することが知られている。調査地のススキは、根に約2,000 mg/kg DWと高濃度のAlを蓄積しており、Al耐性を有すると考えられた。これまでの結果では、ススキ根部から分離した内生菌Chaetomium cupreumは高いAl解毒物質産生能を有し、ススキ実生へ接種することでススキのAl耐性を増強することが明らかとなった。またC. cupreumが産生するAl解毒物質を機器分析に供したところ、oosporeinと同定された。本実験では、oosporeinとAlの錯安定度定数を算出し、ススキが産生するAl解毒物質(chlorogenic acid、malic acidおよびcitric acid)とAlの錯安定度定数と比較することで、oosporeinによるAl解毒への寄与を考察した。
 吸光度法によって、oosporeinとAlは2:1で錯体を形成することが明らかとなった。またpH滴定法によってoosporeinの酸解離定数を算出したところ2段階解離し、各段階の酸解離定数は4.15 × 10-9および5.30 × 10-15と算出された。同様にpH滴定法を用いて得られたoosporein-Alの生成曲線から、oosporein-Alの錯安定度定数を12.1と算出した。この値はchlorogenic acid(錯安定度定数:15.06)より低い値であったが、malic acid(5.4)やcitric acid(8.0)と比較して高い値となった。このことから、oosporeinはmalic acidやcitric acidよりもAlと錯体を形成しやすく、ススキのAl耐性により大きく寄与する可能性が示唆された。そのためC. cupreumはAl解毒に対してより機能的に作用するoosporeinを産生することで、ススキのAl耐性機構を増強していると考えられた。


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