| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-108  (Poster presentation)

土地利用の履歴が半自然草原の菌根菌群集に及ぼす効果

*下野綾子(東邦大・理・生物), 土田航平(東邦大・理・生物), 大和政秀(千葉大・教育), 坂入一瑳(アジア航測), 内山憲太郎(森林総合研究所)

 かつて国土の1割以上を占めていた半自然草原は1/10にまで減少し、それに伴い多くの草原性の植物の生育地が消失した。草原の再生において、造成跡地や耕作放棄地等では外来種が優占し本来の草原とは異なる植生が成立することから、過去の土地利用の履歴が長期にわたり植生に影響を与えることが指摘されてきた。その原因として本研究では菌根菌群集との生物間相互作用に着目した。草本の9割がアーバスキュラー菌根菌(AM菌)と共生し、共生により生育促進や実生の定着率向上など様々な有益な作用がもたらされる。これら菌根菌群集は土壌攪乱等の環境変化によって、たやすく群集構造や感染率が変化するため、過去の土地利用の履歴によって菌根菌群集は大きく変化している可能性がある。そこで本研究では、長期間維持されてきた半自然草原のAM菌群集の特徴を明らかにすることを目的に、土地利用履歴の異なる草原のAM菌群集の種多様性と群集構造を比較した。また土壌の栄養塩と宿主植物の種数がAM菌群集の構造に及ぼす効果を検討した。
 履歴の異なる半自然草原として2タイプ(長期間維持されてきた半自然草原、造成跡地あるいは牧草地)それぞれ3ヶ所選定し、土壌を採集し根を選別した。根からDNAを抽出しAM菌のrDNA SSU領域と植物の葉緑体rbcL領域を増幅し、Miseqによりシークエンスし、分類群の同定を行った。
 長期間維持されてきた半自然草原のAM菌の種多様性は高く、その群集構造は互いに類似しており、造成跡地や牧草地のものと大きく異なった。このことは長年維持されてきた半自然草原には特有の菌根菌群集が形成されていることを示している。これらの半自然草原は宿主植物の多様性が高く、亜硝酸態窒素・リンが少なく、アンモニア態窒素が高いことで特徴づけられた。


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