| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-118  (Poster presentation)

摩周湖外輪山における景観変化の検証-大気環境と地域環境に着目して-

*山口高志(北海道立総合研究機構), 堅田元喜(茨城大学), 堀江洋佑(兵庫県環境センター), 福島慶太郎(京都大学)

 現在北海道東部の摩周湖および兵庫県六甲山で山岳の樹林に対する霧の沈着量評価を進めており、本発表では摩周湖での測定結果について報告する。
 摩周湖では主要樹種のダケカンバの衰退とササ原への移行が観察されており、樹木衰退域や景観変化について調査を進めている。また、要因調査として大気中エアロゾルおよびガスと霧沈着について検討を行っている。これまでの調査からは摩周湖の霧には雨に比べて高い濃度のアンモニウムイオンが含まれることがわかっており、森林では林外に比べ多くの窒素沈着があると予想される。
 2016年の林内雨林外雨法の測定結果から林縁は林外に比べ15-20%程度多い降水量が観測された。これは林縁で霧や雨が樹冠に捕捉され、平地よりも多くの水分量が供給されたためと考えられる。
 霧や雨中の成分濃度は異なるため、林縁での成分沈着量評価には霧と雨それぞれを区分した降水量評価が必要であり今後詳細な検討が必要である。
 大気中アンモニアおよびアンモニウム粒子濃度について夏期の摩周湖は沿岸部の落石岬での測定結果と比べて高く、道東酪農業の影響が考えられた。霧中のアンモニウムも同様の原因と考えられる。
 景観変化については展望台周辺でダケカンバの減少が明らかとなっていたが、一部では1960年代以降にダケカンバ以外の常緑樹も減少していることが確認された。樹木の衰退後はササ原へ移行する地点が多いが、これが自然遷移によるもの何らかの人為的影響によるものかは本研究結果からは不明であり、今後長期の観察が必要だろう。


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