| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-123  (Poster presentation)

木もれびの森の成長と森に対する近隣住民の意識の変化

*山本知紗, 倉本宣(明大・農)

神奈川県相模原市に位置する木もれびの森は、1973年に相模原近郊緑地特別保全地区に指定された73haの雑木林の残存林である。本研究では木もれびの森の変化、木もれびの森と近隣住民の関わり方の変化、木もれびの森に対する利用者の意識の調査を行い、森と人がどのように関わってきたのかを明らかにすることを目的とした。手入れが入っている区域と入っていない区域で階層構造を調査し比較した結果、2000年頃から始まった手入れによって低木層の植被率が低下し、見通しが良くなっていた。木もれびの森と近隣住民の関わり方の変化の調査として聞き取りを行った結果、戦前には伐採・下枝刈り・落ち葉かきが行われており、人はきれいな森だと認識していた。戦後から高度経済成長期頃にかけては枯れ根や枝を薪にすること、下刈り・落ち葉かきが行われており、人は林の中はきれいだったと認識していた。高度経済成長期頃から2000年頃にかけては森の中は下草が伸び放題で治安も悪く大型のゴミが溢れかえっていた。2000年頃から現在にかけては伐採や道の整備が行われているということが聞かれた。木もれびの森に対する利用者の意識の調査として森を歩いている人にアンケートを行った。アンケート結果より利用者の殆どは近隣住民であること、半数近くの利用者が手入れによる変化を認識しているものの森の成長についてはあまり認識していないこと、木もれびの森を残していくために自分が何かする・できるという考えはあまりないことが分かった。時代とともに人の力と森の力のバランスの中で森は変化してきており、これからも様々に変化していくことが予測できる。木もれびの森において、利用者の殆どである近隣住民が森の変化について認識することで森への理解を深め、保全活動の意義を理解してその一部に継続的に関わっていくことが望ましいと考えられる。


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