| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-125  (Poster presentation)

兵庫県淡路島における景観保全による地域づくりに関する研究

*藤原道郎, 澤田佳宏, 豊田正博(淡路景観園芸兵庫県大)

多機能な自然環境を活かした自律的かつレジリエンスの高い地域は,持続可能な地域につながると考えられる.人口減少地域における二次的自然環境を活かした景観保全活動が,植生および作業従事者の精神的,身体的健康にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることから,持続可能な地域づくりを探ることとした.
対象地は平地から丘陵地まで農地・居住地が広く分布し,海岸から山頂までの距離も短く,多様な景観がコンパクトにまとまっている兵庫県淡路島中北部とした.北部は神戸市など都市域からのアクセスも良い.
自然環境の機能のうち景観機能,生物多様性保全機能,健康回復機能に着目した.対象とした景観保全活動は,森林域における竹林伐採活動(県立淡路島公園:専門職大学院学生:2017年11月30日),農村域における棚田畦畔草原刈取り活動(淡路市石田地区:県立高等学校学生:5月~11月),海岸域における特定外来種防除活動(新五色海岸:淡路地域ビジョン委員:11月23日)とした.管理活動前後の植生観察および作業従事者への気分状態調査(POMS2)および参与観察で,参加者に与える作業の影響を明らかにした.
竹林管理伐採では,高木の被陰が解消された.畦畔刈り取りでは,草原生草本の生育が確認され,棚田の水面が見えるところまで行うことで達成感は高まるという結果が得られた.特定外来植物(ナルトサワギク)防除活動では,目視できる範囲でのナルトサワギクは除去された.3つの作業とも,開始から5分程度の活動で作業要領を覚え自分のコントロール下で行える作業となり,POMS2の結果からは,身体的負荷に耐えられる体力がある人にとって緊張・不安軽減効果が期待できることが示された.
景観保全活動の自然環境や健康への効果を知ることで参加者増など活動の活発化につながり,自然環境の多機能性を活かした地域づくりとなることが期待される.


日本生態学会