| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-140  (Poster presentation)

外来種ムラサキツメクサの花粉に含有される栄養解析

*日下石碧, 森誠, 横井智之(筑波大・院・保全生態)

近年、人や物の移動交流が盛んとなり、意図的・非意図的に関わらず、外来種の侵入が問題となっている。外来種の侵入は生物多様性の減少、群集内の植物種・昆虫種の組成を大きく変化させる可能性が示唆されている。その中でも、外来植物の侵入は在来植物への花粉媒介者の訪花頻度を減少させると予測され、在来生態系への負の影響が懸念されている。訪花昆虫の多くは様々な植物種に訪花し、自信の生存のためのエネルギーや仔への餌資源として花粉・花蜜を採餌してきた。そのため、花粉に含有される栄養量は訪花昆虫にとって重要である。しかし、外来植物の侵入によって、訪花昆虫が得られる栄養量が大きく異なることが想定される。
これまでの研究において、セイヨウミツバチやマルハナバチなどが採取した花粉団子を解析した栄養素について報告があるが、他種の花粉が混入している可能性があり、純粋な花粉に含有される栄養成分であると限らない。また、栄養成分評価について画一的な手法も示されていない。そこで、本研究では、葯から直接採取した花粉に含有される栄養素量(タンパク質・遊離アミノ酸)について評価を行なった。対象種を日本の生態系に溶け込んだ外来植物ムラサキツメクサと周辺に開花している植物種の花粉に含有される栄養素の評価を行なった。その結果、ムラサキツメクサに含有されるタンパク質量は高いことが明らかになった。アミノ酸分析では、ハナバチにとって必須アミノ酸と考えられている7種は、どれもムラサキツメクサで多く含有していた。このことから、ハナバチにとって、外来種ムラサキツメクサは花粉媒介昆虫にとって重要な餌資源であることが示唆された。
(本研究成果は、三井物産環境基金 2014年研究助成および、生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の支援を受けて行いました)


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