| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-182  (Poster presentation)

南西諸島における植物相の島嶼間類似度

*鈴木英治, 宮本旬子(鹿児島大学理工学)

南西諸島の島の間の植物相の類似性については、Nakamura et al.(2009)が26の島の約1800種のデータから解析した例などがあるが、3000種以上が分布する同地域の植物相の研究としては十分ではない。今回は鹿児島大学所蔵標本や文献から南西諸島の27の島について、維管束植物3,328種類の分布データをまとめた。
島の種数と面積には有意な相関があり(r2=0.701)、種数=232×面積0.292の式で表された。ただし面積の上位3島、1位の沖縄島、2位の奄美大島、3位の屋久島に注目すると、3位の屋久島が1,768種類と最も多くの植物が生育し、2番目の奄美大島で1,658種、3番目の沖縄島で1,459種類となった。奄美群島の5島については、面積が大きいほど種類数が多くなった。火山活動や人間活動が盛んな島では、面積の割に種数が少ない傾向があった。
島間の植物相の類似度を調べるために、ある種の植物が「有る:1」、「無い:0」のデータを使い、シンプソン・野村の共通度係数(共通種数÷種数が少ない方の島の種数)を計算し、群平均法でクラスター分析を行った。外来種と考えられるものを除く3,110種のデータを使うと、クラスターは大きく2つに分かれ、トカラ列島の渡瀬線以南の小宝島から琉球諸島の南西端与那国島のグループと、渡瀬線以北のトカラ列島、大隅諸島のグループに2分された。渡瀬線は植物においても重要な境界であるようだ。また渡瀬線以南のグループは、琉球諸島と渡瀬線以南の鹿児島側の島々に二分された。外来種を含めた3,328種でクラスター分析を行うと自生種だけで解析した結果よりも、島の位置関係との対応が悪くなった。外来種の存在が本来の植物相の分布パターンを乱しているようだ。


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