| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-185  (Poster presentation)

コンクリート上の赤いダニはどこから来たのか?

*島野智之(法政大学), 蛭田眞平(国立科学博物館), 芝実(松山東雲短期大学)

 日本には,北海道から沖縄までの広い範囲で,体長 1 mm前後の比較的大型の全身が赤~赤橙色のダニが,ビルの屋上などコンクリート表面で大量発生する.芝(2001)は,幼虫標本と日本全国の標本に基づいて,コンクリートの表面の赤いダニを,カベアナタカラダニBalaustium murorum (Hermann, 1804)とし,海岸のものにハマベアナタカラダニと言う和名をあてた.他に5種が日本には産するとしていた.
 日本のカベアナタカラダニの広範囲から得た標本に関して,核18S rRNA 遺伝子とミトコンドリアCOI遺伝子を用いて系統関係を解析をした.解析結果より,日本国内にはヨーロッパのカベアナタカラダニ個体と同一のハプロタイプを含む集団が広域に分布していた.移入のタイミングや方向に関して,現状では結論付けることはできない.国内のBalaustium属のダニ(Balaustium spp.)は,全部で,4系統が確認された.(i) 広域に出現するカベアナタカラダニ(外来種?),(ii) 関東周辺に見られる一群(関東タイプ),海岸より採集したハマベアナタカラダニと予想されたグループも遺伝的に (iii) 愛媛タイプと (iv) 襟裳岬タイプとで異なる2つの系統が存在した.


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