| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-223  (Poster presentation)

休廃止鉱山周辺の河川における底生動物調査:対照地点とどの程度“同じ”なら許容可能か?

*岩崎雄一(産業技術総合研究所), 藤沢めぐみ(横浜国立大学), 荻野激(北海道立総合研究機構), 眞野浩行(産業技術総合研究所), 篠原直秀(産業技術総合研究所), 益永茂樹(横浜国立大学), 加茂将史(産業技術総合研究所)

 亜鉛などの微量金属が水圏生態系に及ぼす影響をいかに評価・管理するかは,環境政策上国際的にも重要な課題である。現在,日本には,坑廃水処理を含む鉱害防止対策を実施している休廃止鉱山が多数存在し,このような休廃止鉱山周辺の流域では,バックグラウンド濃度を含めた河川中の金属濃度が一般的な河川より高いことが複数報告されている。化学物質の生態リスク評価は,予想される環境中濃度と室内試験より得られる毒性値の比較によって実施されるが,実環境中での環境影響をより正確に把握するには,野外生物調査が有用である。
 本研究では,鉱山廃水処理水の環境影響を評価することを目的として,北海道北部に位置する休廃止鉱山を対象に処理水が流入する河川(5地点)および隣接する対照河川(3地点)において合計8調査地点を設定し,2017年6月に金属等の水質調査および底生動物調査を実施した。処理水が流入する河川中の亜鉛,銅,カドミウム,鉛の溶存態濃度は,対照河川に比べて約3~100倍ほど高く,多くの場合で米国の水質クライテリアを超過していた。一方,金属に感受性の高いヒラタカゲロウ科の個体数を両河川地点間で比較したところ,廃水流入前後の地点を除いて同程度であり,統計学的に有意な差は検出されなかった。発表ではより詳細な調査結果をもとに,当該河川における鉱山廃水処理水の影響について考察する。


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