| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-275  (Poster presentation)

博物館における生物動画データベースの公開と運用

*石田惣(大阪市立自然史博物館), 中田兼介(京都女子大学), 西浩孝(豊橋市自然史博物館), 藪田慎司(帝京科学大学)

生物学では、研究過程で動画を撮影することがある。とりわけ動物行動学や生態学では、以前から動画が一次データとして使われてきた。撮影機器の普及・小型化・大容量化により、動画はデータを取る手段として生物研究者に広まり、その記録数は増大しつつある。動画には撮影した研究者自身が意識しない情報も多く含まれる。例えば生物の分布、行動パターン、自然景観といった情報は動画からマイニングできる可能性がある。また、教育目的での利用価値もある。博物館が生物動画を体系的に収集・公開するしくみがあれば、公共財としての研究資源になるはずである。
そこで、大阪市立自然史博物館では動画を収蔵資料として扱い、オンラインデータベースとして公開することを最終目標として計画を進めてきた。その過程で、発表者らは生物研究者や動画資料を扱う研究機関へのヒアリングにより、動画を収蔵資料とするための課題抽出を行ってきた。その結果、利用許諾条件、データの保管方法、メタデータの設定を中心に課題を見いだしてきた。特に利用許諾条件の設定では、利用目的により許諾を判断したい提供者側の意識が根強く、学界でのオープンデータの流れや資料の利用のしやすさとのバランスをどうとるかが課題である。また、ある年齢世代以上が抱えるテープメディア(VHS、miniDV等)のファイル変換や、デジタルデータの安全な保管場所の確保も同種のアーカイブスに共通する悩ましい問題である。
これらの課題について、部分的ではあるが解決する方策を検討してきた。本発表では、それらを踏まえた動画資料の収蔵とデータベースの運用方法、特に提供者と合意する利用許諾の条件設定のあり方と、データを複数の博物館で保管するしくみについて提案する。本発表時に可能であれば、データベースのプロトタイプも紹介する。


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