| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-12  (Poster presentation)

オオイタサンショウウオにおける共食い発生のメカニズム

*太田成実(清心女子高等学校)

本校生物部は、カスミサンショウウオの卵を野外採取してきたことをきっかけに、これまで繁殖地調査、繁殖環境の復元作業、繁殖飼育に取り組んできた。これらの経験を生かして近縁種であるオオイタサンショウウオの生態について調べることにした。本種は絶滅危惧Ⅱ類(環境省)に指定されており、大分県と宮崎県、高知県と限られた地域でのみ生息している。生息場所が圃場整備などの人為的な確変で奪われているため、近年個体数の激減が危惧されている。そこで、私は飼育個体を用いて、死因の原因の一つである幼生における共食いについて研究を始めた。
方法は、水温・密度・体サイズに着目して実験を行った。まず、7月に水温と密度に関する実験を1週間、続いて密度に関する追実験を1週間行った。最後に、11月に体サイズに関する実験を2週間行った。
各実験の結果は、水温の低い(6℃)条件下では、室温(20℃)と比べて共食い発生率が低かった。また、室温では密度の違いに関わらず、共食いが発生した。各実験での共食いのパターンは、7月は丸ごと食べられて死亡か体の一部を残した死亡の2通り、11月は体の一部のみ食べられるが生存のみだった。11月の実験では、体サイズが大きい・中程度のグループ内で共食いが発生し、体サイズが小さいグループ内では確認できなかった。
得られた結果より、共食いは水温に関係しており、活発に行動できない低温では発生しにくくなると考えられる。また、密度よりも個体サイズの大きい個体の有無が大きな要因ではないかと考えられる。今後は、個体密度と個体サイズの関係性に関して孵化して間もない段階から実験を行い、成長段階に合わせて変化するか調べていきたい。また、血縁関係が関係しているかもいれないので、今後さまざまな観点から共食い発生のメカニズムを明らかにしたい。


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