| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-23  (Poster presentation)

ミシシッピアカミミガメに貯精嚢はあるのか

*豊田英里(清心女子高等学校)

爬虫類のスッポンは貯精嚢があり、総排出腔内で体内受精することが知られている。しかし、スッポン以外のカメにおいては貯精嚢の有無に関する報告はない。そこで、スッポン以外のカメにおいても貯精嚢があり、体内受精をするのかを知りたいと思い、要注意外来生物のミシシッピアカミミガメを使い、貯精嚢を確認することとした。
方法としては、輸卵管の各所のパラフィンセクションを行い、雄の精巣及び輸精管内の精子のパラフィンセクションによる顕微鏡像及びスッポンの貯精嚢の文献画像との照合により判断することとした。パラフィンセクションの方法は、次の通りである。
1.「固定」ブアン氏固定液で13時間浸す。
3.「脱水」70%、80%、90%、95%エタノールに計22時間浸した後、100%エタノールに置換。
4.「包埋」キシレン・エタノール、キシレン、キシレン・パラフィンに計22時間、最後にパラフィンに24時間浸し、包埋ブロックを作製。
5.「切片」ミクロトームを用い組織片を作製。
6.「染色」ヘマトキシリン・エオシン二重染色を行い、顕微鏡で観察。
スッポンの貯精嚢が総排出腔から遠い側にあることから、本研究においても同様な部位を中心にパラフィンセクションを行い観察した。
その結果、雄の輸精管内の精子の像と類似した、また、スッポンの貯精嚢の文献画像と似た像を得ることができた。
しかしながら、それらが貯精嚢であるとは、得られた像からだけでは判断することはできなかった。本来ならば、スッポンの文献画像にように、核の割合が高い精子はヘマトキシリンにより濃い紫色に染色され、エオシンにより赤色に染色された貯精嚢壁とははっきりと区別することができるが、得られた像は色の対比がはっきりとしておらず、判断が難しいという結果となった。
今後は、パラフィンセクションの操作と染色の精度をさらに高めると共に、電子顕微鏡を活用するなど、様々な角度からアプローチをしていきたい。


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