| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-35  (Poster presentation)

静岡市巴川流域における外来種と在来種の競合関係-淡水カメ類に注目して-

*松永みなみ, 遠藤知海, 山口小麦, 織田梨菜, 秋澤俊希, 篠﨑奏(静岡北高等学校)

 本研究の目的は、在来種の減少と外来種の増加及び防除における因果関係を明らかにすることである。また、それと同時に、人々の意識を高め、身近な自然環境を維持し、在来種保護の方法を探求するための研究も行っている。
 方法は、調査地域近郊へのアンケートを用いた訪問調査と巴川水系上流部の自然豊かな麻機遊水地における罠を用いた6日間連続集中捕獲調査(標本調査)を2回行い、その個体群構成の作成、環境再現、内容物同定である。捕獲したカメは、測定及び標識付け後、在来種・外来種ともに捕獲した地点に再放流した。(今回の調査で外来種を防除せずに、放流する目的は、再捕獲率を算出するためと、カメの移動性を調べる為である。)
 結果として、アンケートを用いた調査においては、過去のデータも合わせて統計処理を行い、質問項目間の相関関係など従来のデータ処理以外に、人々の意識を定量的に示すことができた。集中捕獲調査においては、在来種と外来種の生息域は重複しているが、近い罠で再捕獲されることや在来種よりも外来種の移動範囲が大きいことから、外来種は在来種を直接的に圧迫していない可能性が示唆された。 再捕獲割合や環境再現の連続動画撮影では、罠や他種に対する攻撃性や忌避性は確認されなかった。ただし、カメ類は、雑食性のため幼体を捕食することも確認されている。そのため、成熟個体と幼体の間では、種間を問わずに競合が起こっている。また、在来種・外来種間で直接的に圧迫が生じてはいないものの、その個体数の差により、遊水地内の餌が不足し、結果として、餌を求めて水田や河川への移動する事で生息域を伸ばし、多くの在来種に影響を与えている可能性が示唆された。
 今後も引き続き、外来種アカミミガメの防除を行いながら、在来種そのものを増加させてゆくことで、本来あるべき生態系を取り戻していきたい。


日本生態学会