| 要旨トップ | ESJ65 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S10  3月16日 9:00-12:00 F会場

生態学における統計教育:計算より概念と考え方

島谷健一郎(統計数理研究所)

今日の生態学会において、データに基づく発表では統計解析を伴わないものはほぼないくらい、統計は普及しました。しかし、せっかく精確にデータを収集し統計解析を施したのに、いざ成果を発表しようと研究全体を俯瞰したとき、統計解析の部分が浮いている、噛み合っていない、統計解析の部分だけブラックボックスと化していて思考が飛んでいる、そんな違和感を残したまま発表している会員は少なくないのではないでしょうか。

肝心な部分にあいまいな理解が残ってしまう一つの理由は、統計教育において計算が先行し、考え方の基礎がおろそかになっている点が挙げられます。
確かに、会員のパソコンを用いる統計計算力は進歩しています。しかし、計算作業は、統計解析の中の1部でしかありません。計算に用いた統計手法の考え方や概念は、数値結果に基づく議論や解釈、さらにはデータ収集法や仮説の立て方、研究目的にまで関係してきます。
 
そこで、このシンポジウムでは、まず、今日の統計解析の2つの主流といえるモデルベース統計とP値を用いる統計について、焦点をその考え方や基礎概念に置いた解説から始めます。続いて、そうした基礎事項を踏まえず計算を先行させると陥りやすい誤り事例を紹介しながら、概念理解の重要さを考え直します。そして、そもそもどうして生態学に統計が必要なのかについて、科学哲学的視点から「集団」を扱う生態学という根源に立ち返って考えます。その後、生態学における統計教育に関して意見をもらい、議論を広げます。

[S10-1] シンポジウム趣旨及び例題:なぜAICはぴったりパラメータ数を引くのか 島谷健一郎(統計数理研究所)

[S10-2] P値とは何だったのか 大久保祐作(北海道大農)

[S10-3] 統計の誤用を解剖する 粕谷英一(九州大理)

[S10-4] 統計学のコペルニクス的転回:集団的思考を禁じるものはなにもない 森元良太(北海道医療大)


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