| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S13-2  (Presentation in Symposium)

日本列島形成史と古地理の変遷

*磯崎行雄(東京大学/総合文化)

日本列島は約7億年前(先カンブリア時代末)に超大陸分裂で生じた大陸縁で生れた。場所は現在の中国南部(揚子江流域以南)の太平洋側で、対岸は北米の西海岸であった。最初の2億年間、現在の大西洋両岸のような安定大陸縁であったが、約5億年前(カンブリア紀)に海洋プレート沈み込みが始まり、その後はマグマ/地震活動が継続する活動的大陸縁として現在に至っている。この活動によって新しい地殻岩石が追加され、南中国の大陸縁辺は少なくとも海洋側に400-500 km拡大し、現在の日本列島の地殻の大部分を構成した。日本列島が大陸から分離して、現在のような弧状列島になったのは約2000万年前(中新世)の日本海の形成以降である。それまでは大陸の一部をなしていたので、古生代化石が示す動物および植物相も南中国のものとほぼ共通であった。一方で、中国北部(黄河流域)は元々南中国とは独立の大陸塊であったが、中生代初めに両者が衝突・合体し(アジア形成の一部として)、それ以降は動植物が混合した。中新世のアジア大陸東縁部の地殻底に地球内部(マントル)からのプルーム(大きな高温の岩石の上昇流)が到着し、直上の地殻を隆起・分裂させた。小規模な海嶺が東西方向に複数できて拡大し、主に西日本の部分を南方に数100 kmのオーダーで移動させ、背後に新たに海盆(日本海)ができた。この地形改変によって、日本の大部分は大陸と地理的隔離を持つようになり、特に陸上の動植物相は、東アジア大陸とは異なる独自の特徴を持つに至った。しかし、その後の第四紀(最近の約260万年)には氷期/間氷期が周期的に反復し、海水準低下時には大陸との間で動物が往来(含日本人の系譜)した。沖縄トラフでは次の拡大が進行中で、九州の南北分裂、四国と九州北部の合体などが起きつつある。プレート運動を外挿すると、さらに2億年後に北米の衝突によって列島の歴史は終わる。


日本生態学会