| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S16-4  (Presentation in Symposium)

捕食-被食関係と水産資源動態

*山村織生(北大院・水)

 摂餌は生物の個体維持に必須の行動であり、その成否が成長や繁殖の良し悪しにも影響する。喰われる側からみると捕食は死亡の要因であり、特に捕食者が多いばあい、その摂食圧の影響が特定の個体群のみならず広く生態系全体におよぶこともある。そのため,優占種が「何をどれだけ食べるか」は,その種の生態を知るためばかりでなく、群集の形成維持や生態系内の物質循環にも関わる重要な情報である.
 水産資源動態の文脈において、捕食は漁獲以外でもっとも重要な死亡要因のひとつである。多くの種で卵〜仔魚(幼生)の間の生き残りが、海流による輸送拡散や輸送先の水温と餌などの環境要因に支配されるのに対し、変態を終えた幼魚(幼体)期以降では捕食による死亡が重要となる。さらに共食いをおこなう種もあり、その生起もまた幼魚の生き残りに影響をおよぼす。
 捕食がある種の資源動態におよぼす影響は:i)捕食者−被食者間の量的関係、ii)捕食者の餌に占めるその種の割合、そしてiii)捕食者の摂餌速度によって決まる。i)に関しては分布の重なりも重要で、例えば水平的には同所的分布でも鉛直的な棲み分けにより捕食が回避される場合もある。近年では食性の分析手法として安定同位体比や脂肪酸組成、あるいはDNAといったマーカーの利用が広まりつつあるが、捕食量推定に必要な高解像度な重量ベースの餌組成データを得るためには、胃内容物の分析が現時点ではもっとも確実かつ廉価な手法である。
 本講演では、重要水産資源のひとつであるスケトウダラ幼魚に対する捕食量の推定事例と、その資源動態との関連を紹介する。


日本生態学会