| 要旨トップ | ESJ65 自由集会 一覧 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


自由集会 W23  3月17日 18:00-20:00 E会場

生物多様性・生態系サービスと資源利用の両立-保残伐施業の可能性-

尾崎研一(森林総研)、明石信廣(道総研林試)

 現代社会においては、木材等の資源利用の場において、生態系サービスとその基盤である生物多様性の保全が重要な課題となっている。そのためには、生態系の健全性を維持しつつ林産物を供給できる、生態学的に持続可能な森林管理(ecologically sustainable forest management)が必要とされている。保残伐施業(または保持施業:retention forestry)は、本来、収穫するはずの樹木の一部を残して森林生態系の複雑な構造を維持することにより、生物多様性や生態系サービスを保全しながら木材資源を利用する方法である。この方法は、現在、世界的に普及しており、それに伴って、その効果を検証する大規模実験が世界各地で行われている。日本においても、北海道のトドマツ人工林を調査地として、保残伐の木材生産効率と、生物多様性や生態系サービスへの影響を検証する実証実験が2013年から行われている。
 本集会では、保残伐施業の大規模実験の立ち上げから5年間の成果をまとめて紹介する。まず生物多様性については、保残伐は森林性種の保全に役立つが、その程度は分類群によって異なることを示す。次に水土保全機能については、水文,水質および水生生物の生息環境に対する伐採直後の変化を紹介する。また、このような施業が伐採前の森林が持つ生態系サービス(虫害抑制機能)をどの程度、維持するのかを実験的に調べた研究結果を示す。最後に資源利用について、伐採時の生産性の低下が当初の予測よりも少なく、それを利用した施業体系を紹介する。これらの成果をもとに、生態学的に持続可能な森林管理を行う上で、保残伐施業の役割と可能性について議論したい。

[W23-1] 趣旨説明 尾崎研一(森林総研)

[W23-2] 保残伐施業と植物、鳥類、昆虫の多様性 明石信廣(道総研林試)

[W23-3] 保残伐施業が水土保全機能に及ぼす効果 長坂晶子(道総研林試)

[W23-4] 保残伐施業と生態系サービス 佐藤重穂(森林総研 北海道)

[W23-5] 持続的な資源利用のための施業体系と保残伐施業 津田高明(道総研林試)


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