| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-05  (Oral presentation)

米魚同時栽培水田における水界食物網構造と物質フロー
Aquatic food web structure and material flow in rice-fish farms

*小関右介(大妻女子大学), 松崎慎一郎(国立環境研究所)
*Yusuke KOSEKI(Otsuma Women's Univ.), Shin-Ichiro Matsuzaki(Natl. Inst. Environ. Study)

集約的農業による農地生態系の劣化を受け、農薬や化学肥料に過度に依存しない持続可能な農業の実践が求められている。農薬や化学肥料の普及以前から存在する伝統的農法の生態学的機序の理解は、そうした持続可能な農業の開発に有益な情報を提供するだろう。

水田で稲とともに魚を育てる「稲田養魚(とうでんようぎょ、Rice-fish culture)」は、アジアを中心に世界中で行われてきた伝統的農法である。今日、国内では長野県佐久地方などでわずかに見られるのみであるが、米魚両全(こめうおりょうぜん)とも評されるこの農法の高い生産性や環境親和性は注目に値する。しかし、この稲田養魚の優れた特性の背後にある生態学的機序については十分解明されていない。

そこで筆者らは、長野県佐久市の水田において、稲作と養魚の互恵関係を支える生態系プロセスの解明を目的として、炭素・窒素安定同位体比を指標とした生物間および生物−環境間の物質フローの分析を進めている。これまでに、養魚水田では慣行水田に比べて土壌および稲体のδ15N値が高いこと、この相違の少なくとも一部は魚が排泄するフンがもたらす「施肥効果」によるものであることを明らかにしてきた。

これらの先行知見を踏まえ、今回の発表では動物プランクトン、フナ、ドジョウ、オタマジャクシなどの水生生物について、δ13Cおよびδ15N値に基づく安定同位体マップおよび混合モデル解析による食物連鎖の結果を示し、これらの水生生物が養魚水田の物質フローにどう関わっているかを評価する。


日本生態学会