| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-06  (Oral presentation)

食生活を中心とした栄養塩のフロー解析 【B】
Flow analyzis about food consumption 【B】

*三島慎一郎, 岸本紅文, 江口定夫, 白戸康人(農研機構・農環研)
*Shinichiro MISHIMA, Ayaka Kishimoto, Sadao Eguchi, Yasuhito Shirato(NARO Inst. AgroEnv. Sci.)

【はじめに】リンは湖沼などの富栄養化・汚濁の本質的な元素の一つであり、その発生源の一つには生活雑排水に始まり様々な人間活動が関わっていることは明らかである。本発表では、人間活動として、食生活・食飼料生産・畜産の3つを中心にした2010年の日本におけるリンのフローと様々な過程でのリン負荷のポテンシャルを推計した。【方法】農林水産省統計、食料需給表、飼料便覧と食品標準成分表、飼料標準成分表、各種文献から食飼料生産と輸入、生産、消費、流通でのリン量とし尿・ふん尿によるリン排泄量を推計した。また、農水省の行ったアンケートから家畜ふん尿堆肥によるリン施用量を推計した。【結果と考察】畜産物と作物を含めた国内での食料供給は45GgPと輸入84GgPであり、食生活に供給された可食部分は半分の60GgPで差分は生産から流通での損失や非可食部が含まれる。排泄等は36GgPで24GgPが生ごみなどと考えられた。畜産物は枝肉等15GgP生産されるが食生活には9GgPが提供されるにすぎず流通上のロスが多く、生産に158GgPの輸入飼料と22GgPの牧草主体の国内産飼料が供給、119GgPのふん尿を排泄、46GgPの損失が出ている。食飼料生産には168GgPの化成肥料と35GgPの家畜排せつ物が使われる。食飼料生産は60GgPであり、2/3が農地に残存する。精緻に詰めるべき部分は推計特に食飼料供給部分に多いのだが、ロスを集めて再利用できれば食飼料輸入・消費・排泄だけで化学肥料に必要な部分は供給できるかもしれない。空に消えない鉱物資源のリンの回収活用は無資源国として重要な意味を持つことになると考えられた。


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