| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B03-04  (Oral presentation)

実現可能なアライグマ防除戦略構築のための必要条件の検討
Study of requirements for feasible control strategies against invasive raccoons

*池田透(北海道大学), 小林あかり(北海道大学), 鈴木嵩彬(北海道大学), 淺野玄(岐阜大学), 國永尚稔(岐阜大学)
*Tohru IKEDA(Hokkaido Univ.), Akari KOBAYASHI(Hokkaido Univ.), Takaaki SUZUKI(Hokkaido Univ.), Makoto ASANO(Gifu Univ.), Naotoshi KUNINAGA(Gifu Univ.)

 外来生物法の施行以来、全国各地でアライグマ防除が実施されているが、成果が得られた対策事例は極めて少ない。その要因には、外来生物法施行以前の対策が有害鳥獣捕獲による対策であり、農業等被害が低減されれば対策が中止されるという状況を未だに踏襲しているところが多いこと、農業等被害への慣れと諦念によって対策自体が形式的なものになってしまっていることがある。これらを打開するためには、アライグマ対策のプロセスを外来種管理の観点から再考し、実現可能な戦略を構築することが必要である。
 日本のアライグマ対策は、農業等被害を防ぐための対症療法的捕獲事業に終始している。捕獲目標も設定されず、モニタリングも行われず、対策効果を評価できる体制になっていない。外来種対策に対して盲目的に根絶を目標とすることも、逆に対策が頓挫してしまう原因となる。外来種対策先進国においては、対策実施以前に実現可能性研究(Feasibility Study:以下FS)を行うのが常識となっているが、日本ではまだ導入事例はない。FSは、対策の目標設定の妥当性そのものを問うものであり、現状に即した防除戦略の構築のためには不可欠である。本研究では、アライグマを対象としたFSの一端を紹介する。アライグマの根絶事例がないため、条件検討型の手法を用い、アライグマ対策が進められている地域を対象に根絶のFSを試みたところ、根絶は極めて困難、もしくはさらに条件が整わなくては容易ではないと判断された。さらには、周辺地域との連携による侵入防止対策及び低密度でのモニタリング手法の開発、農業等損失価値の適正評価と対策予算確保等の課題が明らかとなった。
 今後は、FSにより無謀な根絶目標の設定を回避し、実現可能な防除戦略の構築へ向けた課題の克服、さらには意思決定支援システムの導入も試み、アライグマ対策の効果的・効率的な発展を目指したい。


日本生態学会