| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-09  (Oral presentation)

ウナギ産卵生態の解明へ向けて
Towards the perfect understanding of spawning ecology of freshwater eels

*渡邊俊(近畿大学)
*Shun Watanabe(Kinda Univ.)

これまでの研究から、ニホンウナギ(Anguilla japonica)は新月の2〜4日前に、西マリアナ海嶺と塩分フロントの交点で産卵し、その卵は交点の第3象限に存在することがわかっている。そこで2017年5月13日から27日までに行ったよこすか航海(YK17-10)では、新規に考案した内部潮汐仮説とニホンウナギ用に開発した船上リアルタイムPCR環境DNA法を併用することで、産卵地点をさらに正確に絞り込み、本種の産卵親魚の行動観察することを目的とした。西マリアナ海嶺南端部とXCTDの調査より推定された塩分フロントの交点の第三象限内で内部潮汐エネルギーの最も高い海域を選定すると、そこは過去に親ウナギの捕獲と2回の卵の採集、さらには過去の航海(NT15-08)にて本種の環境DNAを検知した地点であることがわかった。ここを集中観測の海域とし、昼間にしんかい6500の5潜航、夜間によこすかディープ・トウの5潜航を行った。同時に、環境DNA用の採水を1000m層まで計7回実施した。その結果、200〜800m層の採水で計6回、ニホンウナギ環境DNAを検知した。特に産卵ピークの新月3日前の翌朝(5月23日)には、中央部の水深400mから、他の5サンプルよりはるかに高濃度の環境DNAが検出された。これは前夜この地点で産卵行動が起こったことを示すものと考えられた。またディープ・トウにより新月4日前の5月20日21:42、水深222m層において、ウナギの映像を記録・観察することに成功した。しかし、しんかい6500による観察ではウナギに遭遇できなかった。今後、しんかい6500の夜間潜水や無人潜水機の導入などを検討する必要があるものの、今回の調査航海では、内部潮汐仮説の実証や産卵場におけるウナギ遊泳個体の発見、環境DNA法による産卵イベントの検知成功など、ウナギの産卵生態研究は大きな進展を見せた。


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